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探偵事務所は駅前の大通りを外れた死角のビルの最上階にある。最上階の右側が探偵事務所で左側が僕たちの住まいとなっている。
「透子、ただいま。」
「おかえりなさい。」
笑顔で出迎えたのは僕の彼女であり、婚約者の月宮透子20才。気持ち的には生涯ひとりだけの妻だと思ってる。
長髪は満月を彷彿させる金色。以前は着物だったが、最近はコットンシャツにデニムやスキニーを好んで着てることが増えた。
軽快に身動きするにはパンツスタイルだと何気に勧めてみたら、いたく気にいったらしい。ジャケットやカーディガンを羽織るとオフィスカジュアルになるので探偵事務所での応対に支障はない。
出会った時には両親を亡くして天涯孤独の透子の居場所を確保したいって思ったんだ。
僕は最近になって、ようやくチカラを抑制し、効率よく使えるようになっていた。僕たちが同棲しているのも、探偵事務所と住まいを一帯化しているのも、透明人間だと露見しないようにするためだ。
「先にシャワー浴びてくる。」
「わかったわ。朝御飯食べる?」
「うん!朝から講義あるし。」
「ふふっ、頑張ってね。」
透子の肩を優しく撫でながら頬にキスした。
世の中に蔓延るバカップル並には仲良しだと、姉にも太鼓判押されたばかりだよ、うん。
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