曲がった先には

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風呂でさっぱり汗を流し髪を乾かした後、ダイニングキッチンに顔を出した。 「透子、何か感じた?」 「変化は?」 「犬が吠えてたし、上がうるさかったよ。」 「上って空?天候?」 「いや。鳥がスゴくてさ。朝ならわかるけど今は真夜中だし。」 透子は艶やかな微笑みを浮かべた。 「合格。伊織は気配の感知は得意ね。」 と、僕の回答に満足気に言った。 「あの禍々しい気配は何だ?」 「吸血族の気配よ。」 えっ? 「きゅ、吸血族?」 どうしよう?聞き慣れない言葉に戸惑ってしまった。 「そう。独特でしょ?あの気配。催眠術で幻惑させ意のままに人を操る。どの種族よりも強く賢いの。決して伊織から近づかないでね。私たちが敵う相手ではない。私たちのような特異体質者よりも人間を好む性質があるの。邪魔をすれば敵対視されるし攻撃されるわ。」 真顔で“攻撃”と言われて身震いした。きっと死に瀕するレベルに違いない。 「わかったよ。僕は透子が教えてくれたように気配消していた。何もないと思うし大丈夫だよ。敵わないなら透子も気をつけてよ?」 「ふふっ。私は純血種だから大丈夫よ。危ないのは伊織よ?」 (近づかないと約束したけど、万が一、向こうから近づいて来たら、どう対応したらいいんだ?) 「目が合えば挨拶、何もなければスルーしてね。」 テレパシーで僕の疑問に気付いた透子はすぐに答えてくれた。
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