曲がった先には

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大学で講義開始前。席取りしてくれた友達の拓実と雑談していた。 「伊織、拓実。おっはよー。」 元気よく挨拶しながら健哉が僕の肩をバシッと叩いた。 「早く俺たちに彼女紹介しろよ。」 「そうだそうだ。可愛いんだろ?」 「はいはい。そのうちな。」 にんまりした2人の笑顔を見ながらスルーした。 昼間はサダコみたいな抜け殻だし夜は妙に色っぽいし始末に終えない。僕の悩みは誰もわからないに違いない。 そこへ教授が入室してきた。見慣れない風貌の若い男性だ。 「臨時の講師かな?」 思わず呟いたら、僕たちの講義は今日からだと健哉が教えてくれた。透明人間体質に慣れるため、約数ヶ月間大学を休みがちだったので、話題になった当時は聞き流していたのかもしれない。 !!!!! 授業が終わる頃、一瞬、前から何かを感じた。 (げっ!この気配は今朝の!) 「げっ!とは若いな?お前は新顔か。ククク…最近見かけない透明族だな?」 (ええっ?あ、はい。) やってしまった。挨拶してないな僕。次回の講義内容や提出物を言いながらも、直接脳内に話しかけてくる器用さを見習いたい。伴侶の透子としかテレパシー未経験だし、赦して貰えるだろうか。 「これで講義を終了します。おい、狭間伊織!教材を準備室まで運んでくれないか?」 うわぁ~!ご指名だよ。いいえ、の選択はないんだろうし。 「はい。」 即答すると、満足げに教室から去って行った。 隣の拓実が思案顔で声をかけてくれた。 「ついていこうか?」 「大丈夫だよ。あの教授の評判はどう?」 「人気あるぞ?硬派でド真面目だけど、話しかけると気さくに話してくれるってさ。」 「そっか。拓実はまだ講義あるだろ?取って食われる訳じゃないだろうし。 行って来るよ。」 健哉は僕に謝るポーズをしながら、ダッシュでバイト先へ行って、既にいなかった。
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