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何かあればラインするからと拓実を安心させて、準備室へと足を向けた。
(透子、どうしよう?)
(んん?シュークリームより、いちご大福がいい。
むにゃむにゃ…)
僕は助けを呼ぶことも出来ないらしい。
いちご大福>シュークリーム>僕。
悲しき図式だよな。彼氏の危機に居眠りする彼女。
(もう、泣いちゃおうかな?)
(ええっ?この気配は…)
(じゃ、後でね、透子)
ガラッ!と勢いよく戸を開いた。
「失礼します。」
涼しい顔で書物から顔を上げたのは心理学教授、霧谷暸34才。
「一人で来るとは偉いな、坊や。」
うぅっ。坊や扱いか。
ギャー!!
CGを早送りしているみたいだ。目の前で男性が女性へと変わっていく。顔付きや表情が移りゆく様に恐怖を覚えた。
リアルだ。僕が戸を閉めて、僅か数秒間の出来事だった。
「可愛がってあげましょうか?」
あううっ。タイプではないが、レジェンド級の美女が冷徹かつ妖艶な微笑みを浮かべていた。
「こ、声まで変わるんですね。」
何とか返事をした。
「あらら?もう驚かないの?」
意を決して答えた。
「一族で一番強く賢いと断言される吸血族のあなたに僕は敵いません。ジタバタしても僕を手込めにするのは容易いでしょう?
この教材は棚にしまいますが宜しいですか?」
言いながら、ギクシャクした体を何とか動かし、元の棚の位置に並べた。
「他に何か御用でしょうか?」
シィーン。
……あれ?返事がない。
よく見ると教授の体が小刻みに震えている。プルプル肩を上下させているみたいだ。俯いているので表情は見えなかった。
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