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「伊織は妖怪って信じますか?」
「え?妖怪?」
無言で頷いた透子は話を続けた。
「吸血鬼、雪女、狼男等、色んな妖怪が実在します。」
「あれ?話の矛先あってる?」
「はい。実は透明人間の両親から産まれた私は、純血種と言われる透明人間なのです。
秘術と呼ばれる方法で、意識して相手に認識させる事ができますが、認識させないと他人には一切見えないんです。」
ここで透子はにっこり笑った。
「私達、透明人間は運命の伴侶にだけは姿が見えるんです。
不思議ですよね?私も今日まで迷信だと思っていました。両親の姿は見えましたし、他の透明人間を見たことがなかったんです。
……伊織と出会うまでは。」
透子は真剣な瞳を向けて僕を見据えた。
「本来なら私達は衝突せず、互いを知らないまますれ違うはずでした。
けれど、互いを認識した上で衝突したんです。
あの時、互いの霊魂と呼ばれる“珠”が絡み合い、混ざり合ったんです。
運命の伴侶だと“珠”が認めたんです。
その瞬間、伊織も透明人間の体質に変化したのです。
体調の変化は特にないと思いますが、伊織も他人には見えなくなっています。
今も伊織には私が見えている。
私も伊織が見えている。
意味わかりますか?
普通の人間にしたら当然のことですが、この状況は異常なんです。」
透子は長い説明を終えた達成感を滲ませて、もう一度にっこり笑うと、お茶を味わうように飲んだ。
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