運命の曲がり角

9/14

11人が本棚に入れています
本棚に追加
/35ページ
すやすや眠る透子を眺めつつ、スマホ片手に家族へメールした。 「大事な話があるから今夜は帰るね。」 透子の話は本当なのだろう。突拍子もない話だし、未だ実感は沸かないが、疑う余地はないと直感がいっている。 僕の身に起きた出来事を包み隠さず話さなければならない。家族の協力がなければ、今後の生活も困難だろうから。 日常で電話で声だけでも、ラインで文字だけでも誤解を招くことがあるのに、見えないって大変だと思ったんだ。 友達数人にライントークでバイト先に体調不良を理由にシフトチェンジと、授業のノートをお願いすると、一気に行動に移した。 まずスーツケースに、荷物や衣服を詰めて荷造りした。 残り物で炒飯と中華スープを作った。買い物に行く前でよかった。元から中身が乏しかったので、ほぼ空になった冷蔵庫。食材を処分せずに済んだと、苦笑しながら珈琲を飲んだ。 そして、自分の置かれた状況に戸惑いだけが支配している冒頭に戻る。 夕方になって陽が落ちる頃、透子がベッドから抜け出した。 キッチンカウンターのスツールに座り、スマホを前に、気の抜けた僕の背後にやって来た。 「良い薫りですね。私にも珈琲お願いします。」 「了解。おはよう、透… スツールを回し振り返ると、驚きのあまり絶句した。
/35ページ

最初のコメントを投稿しよう!

11人が本棚に入れています
本棚に追加