第1章

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女の子が1人遠望の利く高台の階段に座っている。 彼女の耳に彼女の方へ近寄って来る足音が聞こえた。 振り返った彼女に、近寄って来た足音の主が声をかける。 「ここに居たんだ」 「うん、この夜景を見るのも最後だしね」 彼女は隣に座った男の子にチョコレートを渡す。 「え!?」 「バレンタインの日に渡せないから」 「そっか、ありがとう。 食べていいかい?」 「うん」 男の子は貰ったチョコレートを割り、片方を女の子に渡した。 「ありがとう」 幼いカップルは無言でチョコレートを口の中で溶かす。 2人の頭上では流れ星でも人工衛星でも無い何かが飛び交っていた。 チョコレートを口の中で溶かしながら、2人は互いの目を見つめ固く抱き合い、最初で最後の甘いキスをする。 その時2人の頭上に太陽が出現。 その太陽が生み出した高温の風が、固く抱き合いキスを続けるカップルを飲み込んだ。
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