196人が本棚に入れています
本棚に追加
「征司を見たですって?」
「うん。正確には征司お兄様の影だけど」
「影?」
抽象的な僕の物言いに
貴恵が不審な目を向ける一方。
「君、夕べ何も言ってなかったよね?」
九条さんは深刻な眼差しで
咎めるように言った。
「だって影を見たのは真夜中だもの」
あなたとあれした後だよ――。
言葉にしなくても
ちゃんと伝わるように。
僕は甘えた笑顔を浮かべて
テーブルの下でそっと彼の手を握った。
最初のコメントを投稿しよう!