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「バカ言え。影ってのは光が当たるからできるんだぜ?」
目配せする僕らに水を差すように
薫が冷たく言い放つ。
「真夜中に影は出ないと?」
「幻でも見たんじゃないか」
「そうよ。あんた近頃――いえ今に始まったことじゃないけど、近頃特におかしいもの」
薫の言葉に重ねて
ここぞとばかり貴恵も僕をなじる。
「相変わらずの憎まれ口をありがとう、お姉様」
ぐっとこらえて
僕は再び微笑んだ。
「だけど見間違えでも幻覚でもありません」
あれは
本物だった――。
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