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「どんな風でらっしゃいました?」
「ん?」
「征司様はどんな風で?」
中川だけは
僕をすっかり信じているみたいだ。
「そうだなぁ。征司お兄様は――」
前のめりになって聞き耳を立てている。
「20メートルほど先。こんな風にポケットに両手を突っ込んで」
僕は正確な再現のため
征司の姿を真似てその場で立ち上がった。
「暗闇の中に真直ぐ立って、しばらくの間微動だにせず僕を見てた」
きっと瞬きすらせず
征司は僕を見てた。
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