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「自分の娘が浴槽に投げ込まれてるのに気にしないの?」
「最初の頃は驚いたが、最近は気にならなくなったね。」
「それでいいの?」
「良いんじゃないかい?ミリィもお風呂に投げ入れられないと起きた気がしないと言っていたし。」
そんな事を言っていたのか、そろそろ何か変化をつけないと駄目かもしれない。
俺がそんな事を考えているとミリィが食堂の扉を開けて入ってきた。
「たまには普通に起こしてほしいですよ。」
「私以外の者なら普通に起こしてくれるかも知れませんよ?」
「うーん・・・、タケルさんのお姫様抱っこか、普通の起床か、どちらも捨てがたい気がします。」
「私が抱き上げた時点で起きているのならそのままご起床ください。」
「お風呂まで連れて行ってもらってから起きるつもりで寝たふりするんですけど、途中で二度寝してしまうんですよ。」
「阿保でございますね。」
「あ、あほ・・・。」
ミリィの椅子を引いて座らせ、その後ろに立って髪の毛を梳かし、世話を焼く。
「もうちょっと婚約者に優しくしてくれてもいいんじゃないですか?」
「甘やかすことが優しさではございませんよ。」
「それは解ってますけど。」
俺は髪の毛を梳かし終わり、ミリィのこぼしたパン屑を拾い、一礼してミリィの部屋に鞄を取りに行く。
退室の時に見たアリサは複雑な表情だった。
鞄の中身をチェックし、馬車乗り場に行くと、ミリィとモモが待っていた。
「今日はモモさんと学校に行きます。」
「左様でございますか。」
ミリィと俺の鞄をモモに渡すが、モモは俺の鞄を持ち上げられないで困っている。
「モモ、それを全て持つのが難しいのであれば、紅茶セットとおやつだけで構いませんよ。」
「わ、私には無理です。」
「それはそうでしょう、鉄製の折り畳み式テーブルとイス、水10リットルとミリィ様の替えの制服、替えの下着、非常時の食料が入っておりますので全部で80㎏程になりますから。」
「今ちょっと聞き捨てならない物が有った気がするんですが・・・。」
「毎朝制服と下着を用意しているのは私でございますので、お気になさらず。」
「明日からはモモさんに用意して貰って下さい!」
俺の仕事が一つ減った。
「それより、タケルさんは就職後100日研修ですから、この後執事長の所に行って下さい。」
もうそんなに経つのか。
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