勇者の留学

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「私はあなたの旦那様とお会いした事はございませんが?」 「む?タクマを知らぬのか?」 タクマ・・・ああ、概念神様の事だったな。 「タクマさんの奥様でございましたか、これは失礼いたしました。」 「私も夫の名を教えていなかったようだ、すまない。」 「タケルさんはキルビアさんの旦那様とお知り合いなのですか?」 「ええ、くそ虫の件で少々ありまして、それと私の自殺願望を直してくれたのも彼でございます。」 「それは感謝してもしきれませんね、タケルさんの自殺方法は一風変わっている様で普通の人間なら確実に死ぬ物でしたから。」 当たり前だ、抜け道を探してあれこれ画策するのがどんなに大変なことだったか・・・。 ミリィと俺は別の意味で同時にため息をついた。 「それより知っているか?別の大陸で勇者が召喚されたらしいぞ?」 勇者か、別大陸なら特に俺がすることはないな。 という考えを改められる言葉がミリィの口から飛び出した。 「この学校に留学してくるらしいですね、お父様から聞きましたよ。」 帰ったら問い詰めよう、小一時間と言わず明日の朝まで!! 「ああ、しかし問題があってな、どうやらその勇者は天界の女神の力を根こそぎ持って来ているらしいんだ。」 これまた厄介な・・・。 神の如き力を持つ勇者なんて、手に負えないにも程がある。 「大そう男前らしくてな、力を与えた女神が一目ぼれしたらしく、己の力を根こそぎ与えた挙句、無制限に強化と加護を施したらしい。」 その女神は勇者がこの世界に転送された直後に裁かれたらしいが、すでに転送されてしまった勇者は裁く事が出来ず、暫くは様子を見るという事で話が付いたそうだ。 「好き放題やっている様だ、自分と意見の合わない奴は悪、自分の考えこそが正義、究極のエゴイストだな。」 「全く厄介な案件でございますね・・・。」 「別に関わらなければ良いんじゃないですか?」 「この方は暗に私にその勇者を始末しろと言って居られるのでございます。」 「言っているのは私ではなく、夫だがな。」 「それで?全知全能の神の加護は破れるのでしょうか?」 「神界でもトップ5に入るゼウス様の力を破る事が出来るなら、その女神の力と人を見る目は相当なものだろうね、もしそんな事になるなら、この世界を明け渡すのも吝かじゃないと私は思っている。」 だろうな・・・。
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