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「皆タケルさんに対して薄情です・・・。」
「信じているだけだよ。それに何を差し置いても欲しい物が、この国に有るみたいだしね。」
「!!タケルさん、そんなに欲しい物が有るんですか?」
「はい、ですのでまだしばらくはこの国に滞在して居ようとは思っております。」
「タケルさんの誕生日にはそれをプレゼントしたいので、それが何か教えて下さい。」
俺はナプキンで口を拭いてミリィに視線を向ける。
「な、なんですか?」
「貴女様でございます。」
「ま、またそんな照れ隠しを・・・。」
顔を真っ赤にしてうつむくミリィに、にっこり笑って席を立つ。
「君も苦労するね。」
「お気遣い、いたみ入ります。」
モモにミリィの部屋から鞄を持って来てもらい、俺は一足先に馬車乗り場へと向かった。
放課後、いつも通り帰ろうとしてミリィに止められた。
「タケルさん!決闘!決闘の事忘れてます!!」
ああ、そうだった、やべぇ・・・御者に言うの忘れてた・・。
ため息をつきながら旅支度のカバンを持ち上げて、第一訓練室へと向かう。
「緊張しているんですか?」
「緊張しているというか、嫌気が差しているのでございます。」
「え?私うざいですか?」
「ああいえ、休み時間になるたびに勇者から敵意丸出しの視線で睨まれ続けましたので。」
第一訓練室の扉を開けて中に入る。
「やっと来たのか!!」
「すみません、忘れて帰るところでございました。」
俺は足元に鞄を置いてリングへと上がる。
「旅の支度は整えてございます、どうぞ遠慮なく全力で掛かって来て下さいませ。」
礼をして勇者と向き合う。
「ではこれより、タリリアント王国ミリィ・F・タリリアント王女専属執事、タケル・シノブチとグレン中立連邦よりの留学生、タカシ・ヤマダの決闘を始める。両者敗者への望みは?」
「サキさんの洗脳を解いてこの国から出て行ってもらう!」
「山田様の出身国であるグレン中立連邦を、その手で滅ぼしてもらいます。」
「両者それで良いのであれば構えを。」
しかしこいつ、山田っていうのか・・・。
「はじめ!」
「先手必勝!!」
山田は上級魔法を詠唱破棄で打ってきた。
俺は慌てず一歩前に移動してその魔法に突っ込む。
「な!?口程にもなさそうだね・・・。」
「それはダメージが有ればの話でございましょう?」
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