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服に着いた汚れを浄化魔法で綺麗にしてまた一歩前に進む。
「攻撃しなくても、よろしいのですか?」
言葉と一緒に唾を吐き捨ててもう一歩。
勇者と俺の距離はあと4歩程だ。
「先に言っておきますが、手加減はしませんよ。」
カツリと靴の底が地面をたたく音が響く。
「この間合いなら剣で攻撃も可能でしょう?どうぞ、攻撃の機会を与えて差し上げます。」
後二歩進めば終わるところで俺は立ち止まり頭を下げた。
「後悔するんじゃないぞ!」
勇者は神々しい剣を取り出して俺に切りかかって来る。
「はぁあああ!!!」
バキンッ!と音がして俺の頭に当たった剣は真っ二つに折れた。
「僕の剣が!お前何をした!!」
「何かしていたとして、それを見破る事が出来ないのであれば、何もしていないと白を切ることが可能でございます、イカサマとは元来そう言う物でございますので。」
「審判!こいつの身体検査を要求します!」
「無理だ、そもそも決闘にルールを設けなかったのは貴方ですよ?ヤマダさん。」
「くっ・・・、あなたも洗脳されているのか。」
もういい加減に帰らないと、御者が待ちくたびれてしまいそうだ。
俺はもう一歩前に出て勇者の頭をつかんだ。
「ひっ!!」
「ウィンドボール。」
魔法名をつぶやいた瞬間、勇者の頭が破裂した。
脳漿と頭蓋の破片と肉片と血液をまき散らしながら勇者の頭と風のボールが入れ替わった。
「なるほど、体内に魔法を出現させるとこうなるのか・・・。」
赤い噴水から距離を取り、血飛沫のかからない場所で勝利の宣告を聞いた。
首のなくなった勇者はリングの外に投げ捨てると一瞬で元に戻った。
「はっ、何が起こったんだ!?」
「あなたの負けでございます、あそこにある荷物を持って自国であるグレン中立連邦を、滅ぼして来てください。」
「ぼ、僕が負けるなんてありえない!これはイカサマだ!」
「そうでございます、私はイカサマをしてあなたに勝ちました、それがなにか?」
「卑怯だぞ!!」
「もう勝利の宣告は下されました、今更卑怯だからと言って勝負を無しにするのは決闘のルールに反します。貴方は大人しく自分の国を攻め滅ぼして来てください。もし、その約束を反故にするのだと言うのであれば、命を持って償っていただきます。」
「あなた一人の命で国が一つ助かるのですよ?お得ですね。」
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