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その夜、王様に呼ばれた。
「タケル・シノブチです。」
「入りなさい。」
失礼しますとひと声かけて扉を開ける。
「どういったご用件でしょうか?」
「ああ、大した事ではないのだが。」
だったら呼ばないでほしい。
「ミリィは学校ではどうかね?」
「普通でございます、少々数学が苦手のご様子ではありますが、幸いにも私が教えられる範囲でございますので、問題はないかと。」
「そうか、君は今日決闘をしたそうだね。」
「はい、ミリィ様に付き纏い、大変迷惑をしていたと帰りの馬車の中で伺いました。」
「そうか、セカマの家の息子のヌイだったか。」
「名前など聞いておりませんが、彼には世界樹を探して貰う事にしました。」
王様はうむと頷いて俺の後ろに視線を移した。
「その背中の刺繍はどうしたのかね?」
「果物ナイフで切られてしまったので補修いたしました。」
「見事な刺繍だな。」
「恐れ入ります。」
「タケル君、君は結婚には興味があるかね?」
「ありません。」
若干食い気味に答えてやった。
「家族が増えれば君も死ぬ等と言わなくなると思ったのだが。」
「死ぬ事こそ我が生涯の終着点と思っておりますので、それに向けて邁進して参ります。」
「君は死ぬ事に関してはポジティブだね。」
「ご用件は以上でしょうか?」
「ああ、もう戻って構わないよ。」
俺は王様の部屋を出て屋上から飛び降りて城を抜け出した。
「さて、ルナ帝国はあっちだったな。」
「武流君。」
「またお前か爺・・・。」
「君はこれから国を潰しに行くらしいね。」
だったらなんだ?
「それには少々力が足りないかもしれないから、その分を付け足しに来てあげたんだよ。」
「死ねないのに力が足りないのか?」
「君は仕事のために明日の朝までには帰って来なければならないのだろう?」
確かに国を一つ潰すのに一晩は時間がなさすぎる気がする。
「世界最高の身体能力、絶対に傷つかない体、不老不死、だけど魔力を渡していなかったから、今回は魔力を渡す。」
「何の役に立つんだ?貰っても使い方がわからないぞ?」
「思えば思った形の魔法が使える、それが魔力だよ。」
そうか、思えば思った形の魔法がね・・・。
「転移魔法はこの世界には存在していないからね、使えないよ。」
ないなら作ればいいだけだ。
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