最低の人生

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気が付けば真っ暗な部屋の中で横たわっていた。 「どこだ?ここ・・・。」 「やぁ、目が覚めたかね?」 そこに居たのは一人の老紳士。 「モノクルが似合いますね。」 「ほっほっほ、中々に肝が据わっておるようだ。」 老紳士は立ち上がって俺のほうに歩いて来た。 「君は死んだのだよ、篠淵 武流(しのぶち たける)君。」 「そっすか、それで?」 「もっと驚いたり悲しんだりはしないのかな?」 どうせ死んでないからって言う理由で生きてきた人生だ。 「そう言うのは人生を楽しんだ奴らが持つ感情ですよ。」 生まれると同時に両親が死に、赤ん坊の頃から親戚を盥回しにされて行き付いた先は施設。 その施設も俺が4歳の時に経営難で潰れ、施設の園長が首を吊る瞬間を目撃し、小学校では孤児と虐められ3年の夏休み以来不登校。 勿論不登校な俺に他人である親戚たちが優しくする筈もなくホームレスになった。 中学に行く頃には完全に性格が捻じ曲がり、中学3年間をボッチで過ごし、中学を卒業したらすぐに就職して一人暮らし。 朝から晩まで働いて数千円の給料を貰い美味くも無いコンビニ弁当で飢えを凌ぎ、就職後1週間で重機に潰されて死んだ。 「生に執着するにはちょっとヘビー過ぎるんじゃないっすか?」 「そうだね、だから君には君が望むような転生先を用意しようと思っているのだよ。」 「はぁ?別に生き返りたくないんすけど・・・。」 生きる事が罪だと誰かが言っていた。 生まれる事は呪われる事だと誰かが言っていた。 「やっと死ねたのに、また生き返れって?冗談じゃない。」 「人生とはすばらしい物なのだよ。」 それは幸せを知っているから言える言葉だ。 幸せが一片たりとも無かった俺にはそれが冗談だとしても絶対に言える言葉じゃない。 「大丈夫だよ、次の人生には幸せしか待っていないから。」 「そりゃ楽しみだね。」 勿論期待何かしていない。 俺にとって人生ってやつは苦でしかないから。 「もうどうでも良いや、それで、俺は生き返って何をすれば良いんですか?」 「好きな事をすれば良い、それが出来るだけの身体能力と力を君にプレゼントする。好きに使いたまえ。」 体の中を何かが動くような感覚がした。
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