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「何をしてるんですか?急がないと食事に遅れてしまいますよ。」
「ほら、行きますよ。」
固まっている二人を促して食堂に向かう。
食事中はもちろんミリィの後ろで待機。
「タケル君、一緒に食事をどうかね?」
「主と同じときに食事を摂っては、主の世話ができませんので。」
汚れた口元を拭ったり、飲み物を継ぎ足したり。
これでも色々と忙しいのだ。
「娘の命の恩人を後ろに立たせたまま私達だけ食事をするのはいささか心苦しい物が有ってな。」
「雇い入れてもらえた時点で恩は返されて居りますのでお気になさらずお食事をお続けください。」
王様は唸った後食事を再開した。
「お父様、タケルさんは死ぬために食事を摂っていないらしいです。」
ミリィが余計な事を話し始めた。
「誰も見ていない所できちんと食事はしております。」
執事用に用意されている堅いパンと水と野菜スープだけだが。
きちんと部屋に持って行って食べている。
「信用なりません、今後は私の隣に座って食事の世話をしながら一緒に食事をしてください。」
「それが良いな、雇い主として労働者が過労や空腹で倒れたとあっては、国民に品位を疑われてしまう。」
「ご心配なさらずとも食べずとも空腹にはならず、過労に至るほど仕事熱心なわけでもございません。」
何たって朝ミリィを起こして風呂に入れ、学校に行ったら夕方までは椅子に座った状態で待機、その後馬車で帰ってきて夕食まで椅子に座ってミリィの数学の勉強。
「・・・ミリィ様は大変手の掛からない優秀なお嬢様ですので、仕事熱心だとしても疲れる要素があまりありません。」
「ふむ、それは確かにそうかもしれないが、もう決まってしまった事だから諦めて明日の朝食からミリィの隣に座りなさい。」
「有りがたきお言葉にございます。」
口ではそう言ったが、心情では苦虫をかみつぶしている。
夕食後ミリィを部屋に連れて行き、所用があるとモモに後の事を任せて自室に資料室でテーブルマナーの本を借り、執事長に一晩みっちりマナーを教えてもらった。
俺より執事長の方を労ってやるべきなんじゃないかと思う。
翌朝
「さっさと起きやがって下さい、また風呂にブッコミますよ?」
「みーとぱい・・・むにゃむにゃ。」
寝不足でイライラしている俺は初日同様ミリィを風呂にぶち込んだ。
「うにゃぁあああ!!!」
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