魔王現る?

10/10

53人が本棚に入れています
本棚に追加
/201ページ
俺は昼休みに壁に寄りかかり本を読んでいた。 もちろん主から目を話す事は無いが。 「あ、あの・・・。」 「ん?何か御用でしょうか?」 見知らぬ訳ではないが、名前を知らない少女に声を掛けられた。 「何の本を読んでいるんですか?」 「魔法陣の書き方と記号の意味、つまりは魔法陣の基礎知識の本でございます。」 本を閉じて表紙を見せる。 「猿でも解る魔法陣入門・・・。」 「おそらく学校の図書室にも置いてあるかと。」 「そうですか、ありがとうございました。」 少女がパタパタと駆けて行くのを見送り一度ミリィに視線を向けた後本を開き、読書を再開した。 十分後、俺の隣では先ほどの少女が本を読んでいた。 本の題名は亀でも理解できる魔法陣。 「あれ?タケルさん、サキさんとお友達になったんですか?」 「サキ?この子の事ですか?」 「サキ・シンティアさん、クラスメイトですよ?」 「顔は覚えておりますが、名前まで覚えておりませんでした。」 もちろん朝お茶を飲みに来る三人の名前も知らない。 「タケル・シノブチです、以後お見知りおき下さい。」 「シノブチさん。」 「はい、従者でございますので呼び捨てでも構いません。」 「シノブチさんは本が好きですか?」 「好きと言うほどでは有りませんが、私が勉強をしなければ主が困りますので。」 「私のせいですか!?」 「ミリィ様は勉強がお嫌いですか?」 「そんな事ありません、知らない事を学ぶのは楽しいです。」 表情が乏しい子だと思った。 まるで昔の自分を見ているようだと、今でもそんなに表情豊かな方ではないが・・・。 「タケルさん、そろそろ授業が始まりますよ?」 「私はここから眺めて居りますので。」 「珍しいですね、いつもならすぐ後ろに居るのに。」 「いつもはただ、プレッシャーを与えるために後ろにいるだけです。」 「そうだったんですか!?」 「はい。」 即答するとミリィがorzの体制で崩れ落ちた。 「王族として常に緊張感を持って行動して欲しい、という私のやさしさでございます。」 「私は常に緊張感を持って行動してます。」 「今日の居眠りを見る限り、そうとは思えませんがね。」 俺たちのやり取りで周りはくすくす笑っているが、サキは無表情のまま俺たちを見つめるだけだった。 「中々やり甲斐が有りそうです。」
/201ページ

最初のコメントを投稿しよう!

53人が本棚に入れています
本棚に追加