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「何で起こしに来てくれないんですか!?」
「ミリィ様は昨日の朝、私には起こされたくないとおっしゃったではありませんか?」
「ぐぬぬぬぬ・・・。」
「それより朝食のお時間が押しております、急いでお食べ下さい。」
俺は朝食を残し座ったミリィの後ろに立ち、ボサボサの髪に櫛を通してゆく。
「やっぱり朝はタケルさんが起こしてください!」
「自分で起きるという選択肢はないのですか?」
さらり、さらりと髪の毛を解きほぐし、ミリィが食事を終わらせる頃にはきれいに整っていた。
「ミリィ様、馬車の方へお急ぎください。」
モモから通学鞄を受け取り、一緒に馬車の方へ歩く。
「ギリギリですので、多少急いでお願いします。」
御者にそう伝えて馬車に乗り込んだ。
俺は一昨日本で読んだ魔法を使ってみる事にした。
ミリィを見つめて指をパチンと鳴らす。
「な、何ですか?」
「浄化の魔法でございます。朝のご入浴は時間が無くてできなかった様でございますし、念の為でございます。」
「いつの間にそんな高等魔法を・・・。」
「それとこれをお付けください。」
「これは?」
「レモングラスの茶葉が入ったお守り袋でございます。」
「なぜこれを?」
「いつもの入浴剤と同じ匂いにございます。」
これである程度風呂に入ってないことがばれなくなるはずだ。
ここまでして俺は本を開いた。
「あ、あの。」
「なんでしょう?」
「ごめんなさい・・・。」
「謝る必要はございません。」
ペラリとページをめくり文章を読み進む。
「でも、今朝の朝食を残させてしまいましたし。」
「執事やメイドは食事より仕事が優先されます、お気になさらず。」
学校についていつものようにお茶会をし、1時限目が始まった。
「ふむ、なるほど・・・。」
「随分真剣に授業を聞いてますね。」
「はい、今夜アビラを支配しに行ってまいります故、攻撃魔法は多い方がよろしいかと。」
「えぇええええ!!」
「何だ?タリリアント、何か間違っていたか?」
「僭越ながら、その魔法陣の基底部の記号に一本線が抜けております。その形ですと拡散型として知られておりますが、説明には収束型と書かれております。」
「そ、そうだな、よく気が付いた。」
「ミリィ様、叫ぶにしてももう少しボリュームを抑えてくださいますようお願いします。
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