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ギルドの中はすごく狭かった。
受付の机と依頼書の掲示板、それと待合用のベンチが一つ。
「あんた名前は?」
「タケル・シノブチと申します。」
「へぇ、極東の出身かい、こりゃ腕が鳴るねぇ。」
どうやらこの人は若干戦闘狂の気があるらしい。
「あたしはマキ、マキ・ヴァビリアンだ。」
マキと名乗った女性は俺に一枚の羊皮紙を渡してきた。
「これに名前と性別と死んでもかまわねぇっていう同意欄に名前を書きこみな!」
羊皮紙にさらさらとペンを走らせ、名前と性別と同意欄に署名した。
「書き終わったら着いてきな。」
羊皮紙を受付に座る女性に渡して、俺とミリィはギルドの地下に続く階段へと案内された。
「あんたの勝利条件はあたしが参ったと言うか、死んだ場合、逆に敗北の条件はあんたが死んだ場合だ。」
「かしこまりました。」
「はぁ・・・、何であんたみたいな畏まったやつがこのギルドに来るんだよ・・・。」
「ミリィ様がここに登録しているという事でしたので、執事は常に主とともにいるのが仕事でございますゆえ。」
「もっと良いギルドがあるだろう?光の導きとかよぉ・・・。」
「実は私は、仕事以外だとただの捻くれ者でな。」
「!?」
「いつもは執事の仕事で丁寧な言葉遣いをしてるが、別に上品な人間と言うわけじゃねぇんだよ。」
「ハハッ!そう言う事かい!!」
いきなり態度の変わった俺にマキはこぶしを握って突っ込んできた。
ガッ!とこぶしを額で受け止める。
「敗北条件は俺が死んだ場合だと言ったな?」
「な・・・に?」
俺はマキの腕を掴んでその拳を俺の心臓の位置に当てた。
「次はここだ、ここをぶち抜く勢いで殴ってこい。」
「上等じゃねぇか!うぉらぁあああ!!!!」
どぐぉん!!と俺の心臓の位置にマキの拳が突き刺さる。
「おら!おら!おら!うらぁあああ!!!」
寸分違わず俺の心臓の位置を的確に殴ってくる。
「凄い、すごいぞ!全然拳がぶれない!!全く同じ位置を連続で殴ってるぞ!!」
「まだまだイクゾォオオオ!!!!」
マキの咆哮と共にスピードと威力が増した。
「はは、ははははははは!!!良いぞ!最高だ!!殺せ!俺を死なせてみろ!!」
「望み通り、ぶっころしてやらぁあああ!!!」
蹴りや肘打ち、膝蹴りも飛んできた。
「まだだ!まだ弱い!もっと強く!!」
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