猫がいる日

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食堂の扉を開けて中に入った。 「おはようございます。」 「おはよう、その猫はどうしたんだい?」 「今朝、私のベッドに潜り込んで来たんです。」 「ミリィ様を早起きさせることができる、大変優秀な猫なのです。」 「ほう、それでどうするんだい?」 「飼い主が見つからなかった場合は、ミリィ様が目覚まし時計の代わりに猫を飼い、お世話をします。」 「この子、野良じゃないんですか?」 こんな毛並みの良い野良はそうそう居ない。 「今後町の方で猫探しの情報などが有りましたらご一報ください。」 その後、本当に久しぶりにゆっくりと朝食を食べて、ここに来て以来初めてのんびりと登校した。 「こんなゆっくりな朝も良いですよね。」 「私は毎朝こうなる様に起こしているつもりでございます。」 教室に辿り着いたのもいつもより5分程度早かった。 「今日は蒸しパンはございませんの?」 「よほど気に居られたご様子、後程レシピをお渡しいたしますので、ご自宅でも楽しんでくださいませ。」 「ミリィ様は明日からの試験勉強はしておりますの?」 「試験?」 「ミリィ様は常日頃から欠かさず勉強を行っておりますので、今更試験のための勉強など必要ありません。」 ミリィの顔が、さぁ・・・と音を立てて青くなった。 「タケルさんは試験の事を知ってたんですか!?」 「勿論でございます。」 「教えてくださいよ!?」 「毎日教えているではありませんか、何のために私が家庭教師のまねごとをしていると思って居たのです?」 毎日復習の意味を込めて同じ問題を出し、できなかった所をこれでもかと叩き込んできた。 「テスト勉強などと言う付け焼刃はするだけ無駄でございますし、100点は無理にしても、90点以上は取れるように勉強を教えてきたつもりでございます。」 「ミリィ様の執事は優秀で羨ましいですわ。」 「お褒めに預かり恐悦の極みにございます。」 ティーセットを片付け、テーブルクロスを外すとミリィは1時限目の数学の教科書を取り出して広げた。 「今から少しでも試験勉強をしなきゃ・・・。」 「ではミリィ様、解らない所を探してくださいませ。試験範囲は72ページから105ページまででございます。」 「解らないところ・・・、解らないところ・・・」 必死になって解らない所を探す姿は実に滑稽だった。
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