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「な、ない・・・です。」
「3往復してようやく諦めましたか。」
因みにそれ以前の範囲についてもこの1週間で全て復習を終えている。
「やはり掛け算、掛け算がネックだったようですね!」
「ミリィ様は掛け算以降がすべてネックでした。」
「え?」
「掛け算も割り算も分数も現在習っている因数分解も、はっきり言ってダメダメ、本当にダメダメ、何度匙を投げようと思ったことか。」
「そ、そんなにですか?」
「そりゃもう、2×3を9と書いた時には絞め殺してやろうかと思ったほどでございます。」
「」
教師が教室に入ってきて授業が始まった。
俺は数学の本を読みながら教師の言葉に耳を傾ける。
「タケルさん、ここはどうやるんですか?」
「ん?ここはこのカッコ内を先に計算して、その数字にこの数字を掛けて、この数字で割るのです。」
教師がいるのになんで俺に聞いてくるんだ・・・。
「ミリィ様、授業中の不明点は教師の方にお聞きください。」
「そうですね、つい家で勉強している時の癖で。」
俺は再び本に視線を落とし、ミリィは授業に集中し始めた。
「ふぅ・・・。」
俺は本を閉じて鞄にしまい、ミリィの方へ向き直る。
「ここはこれを代入して計算をし直すのです。」
「え?ああ、なるほど・・・。」
「解らない事が有れば教師に聞けと申し上げたはずです。」
「何か聞き辛いんですよね・・・。」
「人は教えられる事のみで成長するわけではございません、人に教える事でも成長する事が出来るのです。」
「何の話ですか?」
「今の所が解り辛い、そう指摘されれば次からはもっとわかりやすく丁寧に解説する様になります。」
「普通はそうですね。」
「ミリィ様は教師に勉強を教えてもらっている反面、教師に説明の仕方を教えているのです。」
「はい・・・?」
「ですので、解り辛い所はきちんと教師に報告してきちんと説明して貰ってあげてください、お互いのためにも。」
「はい。」
「教師生活が短い訳では無いが、その様な事を言われたのは初めての経験だ。」
「決して馬鹿にした訳ではございませんゆえ、ご容赦ください。」
いつの間にか教師がミリィの後ろに立っていた。
「いや、参考になった、これからはもっと生徒の言葉に耳を傾ける事にする。」
「ご理解いただけて嬉しく思います。」
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