猫がいる日

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ミリィは急に慌て始めた。 「な、何ですか急に?」 「先程褒められて伸びるとおっしゃったので、褒めているのでございます。」 「そ、そうですか・・・。」 「どうですか?伸びそうですか?」 「無理そうですね・・・。」 「そうでしょうね、褒められて伸びる人はきっと褒められるだけの実力が有りますからね。」 俺だって別に絶対に褒めないわけじゃない。 「ミリィ様は褒められて調子に乗れるタイプの人間じゃありません。」 「そうみたいです。」 「試験で全教科90点以上獲得できましたら、褒めて差し上げます。」 ミリィはその日一日の授業をずっと真剣に聞いていた。 「ふむ、やればできるのでございますね。」 「絶対にタケルさんには褒めてもらいます!」 そこまでして褒めて欲しいのか。 「上辺だけで良ければいつでも。」 「絶対、ぜーーーーったいに!!心の底から『よくやった』って言わせて見せますからね!覚悟しておいてください!!」 俺はふふんと鼻で笑って本に視線を落した。 「どうやらミリィ様は褒めるより挑発した方がやる気を出していただけるご様子、私とは相性ピッタリでございますね。」 「もっと優しい人を選べばよかったです。」 「今からでも遅くはありませんよ?探してみてはいかがです?」 「タケルさんは優しくはないですが優秀なので良いんです。」 「さようでございますか。」 本を閉じて馬車を止めてもらう。 「すみませんが所用が御座います故、ここからはお一人でお帰り下さいますよう、お願い申し上げます。」 「はい?どこかに行くなら付き合いますよ?」 「ミリィ様はお城に帰って明日に向けての付け焼刃でも付けていてください。」 御者に合図をしてミリィを乗せたままの馬車を見送った。 「さて、行くか。」 まずは時計屋に行って懐中時計、その後文房具屋に行って万年筆とインク、後は近くの雑貨屋によって猫のおもちゃを一つ買った。 「後は・・・。」 目の前には魔王の城と見紛う程禍々しい建物、今メイドたちの間で人気の高いファンシーショップだ。 「くっ・・・、何て威圧感だ・・・。」 入店するまでに10分迷ったが、目的の物を買う事が出来た。 「二度と経験したくないプレッシャーだったぜ・・・。」 店の中は女性客ないしカップルの巣窟。 男性一人の客は俺だけだった。
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