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「ふむ、良くできましたね。」
「え?」
「なにか?」
「今、褒めてくれたんですか?」
「人が努力して、その結果が良かったら、普通は褒めるモノではないのですか?」
「でも、今まで褒めてくれたことなんかないですよね?」
「ミリィ様が褒められるほどの事をしてこなかったからでしょう。」
ミリィはうつむいてしまった。
「努力はしましたよ、でもタケルさんはそれを認めてくれないじゃないですか・・・。」
「努力の仕方を間違っているからです。」
「今までの私の努力は、どう間違っていたんですか?」
「・・・この間、恋の話をしましたね。」
「はい?」
「その時ミリィ様は、国王様が選んだ相手と結婚する、そう仰いましたよね?」
「はぁ・・・そうですね。」
「それと同じでございます。」
「ちょっと意味が解らないです。」
「ミリィ様の努力は、人の為の物でございますれば、己のためではない努力しか知らないのです。」
ミリィは小首をかしげて俺の顔を見ていた。
「好きな人と結婚するための努力、それが個人の努力でございます。そしてその結果が伴えば好きな人と結婚できるわけです。」
「そうですね。」
「しかし、ミリィ様の場合はその努力をないがしろにして居るのでございます。その結果相手が好きな人であればまだ良いですが、どうにも生理的に受け付けない場合もございましょう。その時になって初めて後悔する事になるのでございます。『好きな人と結婚したかった。』と。」
ミリィはぽかんと口を開けて俺の話を聞いていた。
「試験も結婚も同じでございます。ミリィ様は結果が出るまで『自分が努力していなかった事』に気が付かないのですよ。」
俺は間抜け面で俺を見ているミリィに視線を合わせる。
「努力はして当然なのですから、『努力の結果がこうだった』などと言う言い訳は通用しないのです。努力をするなら、『こう言う結果が欲しくて努力する。』、それが本物の努力でございましょう?」
ミリィが目を見開く。
「私が認めなかった、その通りでございます。あなたは認められるほどの努力をしていませんでしたので。」
ミリィの目に涙が浮かぶが、俺は言葉をつづける事にした。
「結果が伴わない?逆でございます。結果を出すために、努力が伴っていないのでございます。」
パシンッ!と乾いた音が部屋に響いた。
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