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シンと室内が静まり返る。
俺が殴られたのだと気付いたのはミリィが部屋を飛び出した後だった。
「やれやれ、世話の掛かるお嬢様だ。」
俺は椅子に座って本を広げた。
「あ、あの・・・。」
あけ放たれたドアの外にはモモが立っていた。
「どうしました?」
「姫様が泣きながら走って行ったので、どうしたのかと思いまして。」
「少々言葉がきつくなってしまっただけでございます。」
せっかく本を広げたのに邪魔が入ってしまった。
「はぁ・・・、私は国王の所に行きます、モモはミリィ様をよろしくお願いします。」
ミリィの部屋を出て国王の部屋への道すがら、階段を上ってきたメイド長に捕まった。
「先程、姫様が泣きながら走って来られたのだけれど、何が有ったの?」
「国のために結婚する等とふざけた事を申されましたので少々説教を、それとその為の決意をズタボロにしました。」
「何故、国のための結婚がふざけた事なのかしら?」
「国のために良い国王を探すのであれば文句はありませんが、ミリィ様の言う国のための結婚は、ただの政略結婚にございます。しかし、この国は近い将来、世界を支配する国になります。そうなれば、この国の政治は世界の政治、政略など必要御座いませんので、ふざけた事だと申したのでございます。」
「・・・・・・。」
「それともう一つ、短い期間ではございますが、私はミリィ様の執事にございます。主が幸せな結婚を出来る様に計らうのも仕事のうちにございましょう。」
俺は頭を下げて、メイド長の横を通り過ぎた。階段の途中に隠れていたミリィを見なかった事にして。
国王の部屋の扉をノックするとすぐ、執事長がドアを開けてくれた。
「お話が御座います。」
「今度はどこの国を落すんだい?」
「今日は国盗りではございません。ミリィ様の事でございます。」
「なんだい?」
「もし、ミリィ様を使ってイシュタールを吸収するおつもりなら、申し訳ありませんが、私はこの国をつぶそうと思います。」
「・・・、何でそんな考えに至ったのか、聞いても良いかな?」
「まず、ミリィ様は国王の連れてきた相手と結婚すると言いました。」
「あの子がそんな事を・・・。」
「それと、この国にはイシュタールを吸収できるほどの取引材料がありません。その二つから導き出される答えは。」
「ミリィを使った政略結婚か。」
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