猫がいる日

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俺は国王をにらみつける。 「安心していい、私はミリィに政略結婚なんて持ち掛けないさ。」 「では、どのようにしてイシュタールを吸収なさるおつもりで?」 「実はね、あの国の女王は今独り身、つまり未亡人でね、私もミリィが生まれてすぐ妻を亡くしているのだよ。」 「そうでございましたか。」 そう言えばこの城に来て、一度もミリィの母親に会った事がないと言う事実に今更気が付いた。 「これは本当に秘密の話なんだが、実はイシュタールの女王と私は学生時代に恋人でね、お互い親の決めた相手と結婚する事になって別れてしまったんだ。」 「そうでございましたか。」 「そしてつい最近、新兵器の技術提供を申し込むという理由で、お互いに再開し、近況を知ったのさ。」 「まさかとは思いますが・・・。」 「そう、そのまさか、お互い再燃してしまって、いっそ国ごとくっつけてしまおうという話になった。」 侵略に待ったをかけたのはそういう理由だったか。 「そこに君が都合よくダルメルを壊滅してくれた。そのおかげでこの国とイシュタールとの間に国もなく、その先の共同国家ガリアにも牽制を掛ける事が出来た。」 つまり、政略結婚をするのはミリィじゃなくて国王だった。 「タケル君、君がミリィのためにこうして動いてくれたこと、私は嬉しく思うよ。」 「勿体ないお言葉でございます。」 「それに私がミリィを政略結婚させるとすれば、その相手は君だ。」 「きっぱりとお断りさせていただきます。」 「そんなに嫌かい?」 「娘が不幸になってよいのであれば、私でも構いませんが?私は世界樹が見つかり次第、この世界から消える者でございますので。」 「この先70年位、死ぬのを我慢してくれまいか?」 「さて、見つかるまでの間は我慢できますが、見つかった後の事は、解りかねます。」 「世界樹なんか、見つからなければ良いのだ・・・。」 「親子でございますね、ミリィ様も同じことを申されました。」 「ふっ、そうかい、しかしあと100年分、君はこの城の宿泊を予約しているね。」 「もし、明日にでも世界樹が見つかったとして、返金を申し出る事はございませんので、ご安心ください。」 「返金できないのなら、100年留まる覚悟をしてもらうけどね。」 一瞬だけ、お互いの視線が交差した。 「食えぬお方にございますね。」
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