王国の帝

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「私の誕生日は10月5日です。」 「そうですか、まだ先ですね・・・。」 「その頃まで生きていると言う保証もありませんね。」 「まだ死ぬつもりなんですか?」 「はい、その為に今世界樹を探しているのですから。」 「私も、世界樹について色々調べてるんですけど、どうやら世界樹の実には、死者を蘇生させる力があるそうです。」 世界樹に行くときは一人で行こうと心に決めた。 「さて、スッキリしましたか?」 「はい?」 「先程から随分と上の空だった様でしたので。」 「いえ、別にタケルさんの事で上の空だったわけではないんです。」 俺は腕を組んで溜息を吐いた。 「お父様が、婚約者を決めてきました。」 「ふむ、以前よりそれに従うと言っていたのに、なぜ今更それに戸惑っているのでございましょうか?」 「私、最近好きな人が出来たんです。」 「そうでございましたか、おめでとうございます。」 「それなのに、その人には思いも告げられず、このままお父様が決めた婚約者と結婚する事になる、それが悲しくて。」 「それでしたら、王国を滅ぼして差し上げましょうか?」 ミリィはぎょっとした顔で俺の方に向き直った。 「そうすれば国王は守る国もなくなり、王女と言うブランドがなくなったミリィ様はただの女性になります。」 「貴方は、この国を大切には思って居ないんですか?」 「国などどこにでもあります。私が仕えているのは国ではなく、ミリィ様ですので、ご命令とあらばこの程度の国、潰して御覧に入れます。」 「随分と物騒な話をしているね。」 国王がドアの所に立っていた。 「お父様・・・。」 「ミリィ、婚約者の事で話がある。タケル君は悪いが少し席をはずして貰えないか?」 「畏まりました。」 俺はミリィの部屋を出て自室に戻り、いつもの様に本を広げた。 「さて、騎士が揃い次第、大陸最後の国を落すとしよう。」 今読んでいる本の題名は『正しい国の落し方①』 戦略や兵法は戦いの定石であり、基本はその定石に準えて作戦が建てられる。 しかし、どんな戦略も兵法も圧倒的な力の前には無力である。 そう書かれている。 「最高の作戦とは、最高にシンプルだと言う事を思い知らせてやる。」 ガリア攻略の作戦は、一直線に城に飛び入り、ガリア国王の首を取る。 ただそれだけの作戦とも呼べない物だ。
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