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その状態で食堂に入ると視線が集まるのが解った。
「タケル君、どうしたんだい?」
「私にも解りませんが、急に目隠しをされ、手を縛られました。」
「ミリィ、何でこんなことを・・・。」
「今私の目の下にクマが有るので、見られるのが恥ずかしいです。」
「しかしこれではタケル君が朝食を食べられないじゃないか。」
「私が食べさせるので大丈夫です。」
全然大丈夫じゃない。
「いい加減に外して貰えなければ、引き千切りますよ。」
「ロープで5回は巻いてますし、いくらタケルさんでも無理では?」
ブチィッ!と音が鳴ってロープが千切れ、どさっと床に落ちた。
「身体強化をすれば一発です。」
「・・・・・・。」
「見られて恥かしいと言うのであれば目隠しはこのままにしておきますので、ご安心ください。」
ミリィのいる方にお辞儀をして席に座った。
「タケルさん?本当は見えてるんですよね?」
「視覚だけに頼っていては執事の仕事は務まらないと、執事長が心眼なる技術を教えてくれましてございます。」
鮮明ではないが、どこに何が有るのか、その程度は問題なく分る。
訳も分からないまま朝食を済ませてミリィを部屋に押し込み目隠しを外した。
「さて、午後までは開発に勤しむとしよう。」
自室に入りあの爺からもらった魔法陣を解読する作業を始めて暫く経ったころ、自室のドアがノックされた。
「開いております。」
「失礼するよ。」
国王が部屋に入ってきた。
「一国の主がこのような所に来ては色々と問題が御座います。」
「タケル君、君はミリィと結婚してもらう。」
「左様でございますか。」
「驚かないのかい?」
「ミリィ様に婚約者が現れた、しかも国王様が宛がった、そして国王様はミリィ様を結婚させるとすれば、その相手は私だと仰っておりましたので、大方の予想は出来ておりました。」
「相変わらず優秀だね。」
「普通でございます。」
会話をしながら俺は作業をつづけた。
「それで?承諾してもらえるのかな?」
「世界樹が見つかるまでの間でよろしければ。」
「そうかい、それじゃよろしく頼むよ、それと、世界樹の事だが。」
「何でございましょう。」
「捜索の援助は打ち切らせて貰う事にした。」
「な!?」
「私も父親なのでね、娘の幸せが第一なのだよ。」
してやられたという訳だ。
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