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「これは捜索打ち切りの復讐かい?」
「滅相もない、適量をかけて食べれば、本当に美味しい調味料なのでございます。」
「だけどさっき私が悲鳴を上げたとき、君はスッキリしたって呟いたよね。」
「はい、この国に来て激辛を食す機会が御座いませんでしたので、ストレスが溜まって居たのでございます。」
しれっと言い訳を返して普通に席に座り、食事を再開する。
「げ、激辛?」
「それよりも、早く食べないと冷めてしまいますよ?」
「う、うむ・・・。」
国王は恐る恐るパスタを口に運び、一口ごとに咽た。
「遅くなりました。」
食堂に入ってきたミリィは何か、めちゃくちゃ畏まった格好だった。
「ミリィ、その恰好はどうしたんだい?」
「し、式典の時しか着ないのでは勿体ないんじゃないかなって。」
ミリィの目が物凄く泳いでいたのを俺は見逃さなかった。
「そのように畏まった格好では、他の従者達に気を使わせてしまう恐れが御座います。」
「感想はそれだけですか!?」
「式典で着飾るのは他人に対する見栄の為、豪奢な恰好をする事で相手に自分の地位を示すためでございます、この城の中のどこに自分の地位を示す必要がある者が居られるのでございましょう?」
「・・・・・・。」
あからさまに落ち込んだような顔になるミリィにため息が漏れた。
「ミリィ様はそのような恰好をしなくても十分お綺麗で可愛らしいお方でございますし、食事で汚してしまうにはそのお召し物はもったいない物でございます。」
「タケル君の言うとおりだねミリィ、着替えてきなさい。」
「はい。」
俺は食事を終えていたので、立ち上がってミリィと一緒に食堂を出た。
「タケルさん?」
「私がお召し物を見繕って差し上げましょう。」
ミリィの部屋に一緒に入ってクローゼットを開く。
「ふむ・・・。」
「あの、タケルさん?」
「何でございますか?」
「このドレスは、似合ってませんか?」
「似合ってはおりますが、場違いでございます。世の中にはTPOつまり、時と場所と場合と言うものが御座います。私と婚約する事で浮かれて頂けるのは嬉しく思いますが、浮かれすぎて変人になってしまわれるのは嬉しくございません。」
よし、この服にするか。
白いロングスカートに群青のワイシャツ、その上に淡い黄色のベストを着せて緑のチェック柄のネクタイ。
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