勇者と執事

2/10
前へ
/201ページ
次へ
「タケルさん、大変ですよ!」 あのデートから数日、ようやく婚約者同士と言う関係に慣れてきた。 挙動不審だったり、浮かれすぎて夜に眠れなかったりする事がなくなってきた。 「騒々しいですね、どうなさいましたか?」 「ガリアが勇者召喚を行いました。」 「左様でございますか。」 大陸諸国が侵略されてしまった危機感からその防衛策を講じたか。 「それだけですか!?」 「はい。」 短く答えて本のページをめくる。 「これから侵略する国に、巨大な戦力が現れたんですよ!?」 「そうでございますね。」 「流石に不味いんじゃないですか?」 「そうでございますねぇ、自分勝手な正義感、とても厄介だと思いますね。」 勇者、古には魔王を退治し世界に平和をもたらした存在。 「さしずめ魔王は私でございましょう。」 不老不死何て、ふざけた能力が有る魔王何て絶対に相手にしたくない物ではあるが。 「もっと危機感を持ってください!」 「では今から乗り込んで殺してきましょう。」 「え?」 「勇者は成長すると大変危険ですので、成長する前にその芽を摘んでしまいましょう、と言っているのです。」 「そんな簡単に・・・。」 「勇者は最初から伝説級の武具を持っているのでしょうか?」 「はい?」 「一緒に戦うパーティはどうでしょうか?」 「えっと・・・?」 「伝説級の武具が揃っていたとして、果たして戦い方を知っているのでしょうか?」 「うーん・・・。」 おそらく、それは全部揃っていない。 武具も仲間も、戦い方も、もしかしたら魔法の使い方も解っていない可能性がある。 「私の見立てでございますが、おそらく勇者はまだ、ただの一般人レベルかそれに毛が生えた程度でございます。 「こ、殺す必要はあるのでしょうか・・・?」 「恐らく、侵略の時に殺しておかなければ、のちに反乱軍を率いて盾突いて来る事になるでしょう。」 しかも勇者としてふさわしい力をつけて。 「今のうちなら勇者一人で済むのです。」 反乱軍にでもなられたらそれこそ数百、もしかしたら数千の血が流れる事になる。 「何か他に方法はないんですか?」 「勇者に気が付かれないように攻略するしかないでしょうな。」 しかし、侵略に備えて召喚した勇者を、侵略されている時に出して来ない訳がない。 「降伏勧告を出しましょう。」
/201ページ

最初のコメントを投稿しよう!

53人が本棚に入れています
本棚に追加