勇者と執事

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ガリアは勇者が死んだ事で戦力を失い、全面降伏を申し出てきた。 「様子見のつもりだったんだがな・・・。」 降伏の念書を受け取り、俺は城に帰った。 「ただいま帰りました。」 「ああ、早かったね、勇者はどうだった?」 「それなのですが、少々予定外の事が起こりまして・・・。」 ため息交じりに念書を取り出して国王に渡す。 「勇者が予想以上に弱くて、殺してしまいました。」 「これで大陸制覇だね。」 「イシュタールが残っております。」 「ああ、その事だけどね、月末に式を執り行う。」 かなり急な話だな・・・。 「イシュタールだけ我が国の支配を免れているからね、他の国からの支援や救助の要請が来ているらしいんだ。」 「それでしたら、さっさと攻略してしまえば済む話でございます。」 そうすれば他国の援助だとか支援だとかと言う話もなくなる。 「その後国王様がイシュタールの女王を助けて結婚すると言う美談も生まれますし、国民からの支持も集められましょう。」 「だが、今更攻めたりしたらおかしいとは思われないだろうか?」 「相手は魔法都市、その鉄壁な防御魔法を破る術が見つからず後回しにしていたと言う事にすれば問題ないかと。」 「彼女には危険はないんだね?」 「誓いましょう。」 国王にイシュタール攻略の概要と目的と日時を書かせ、それを女王に届けさせた。 「それでは週末、イシュタールを攻略して参ります。」 翌朝、ミリィの部屋に行くと何とも幸せそうな顔で寝ていた。 「さっさと起きやがって下さい、朝の入浴のお時間でございます。」 チッと舌打ちをしてミリィをシーツでくるむ。 リリィはその途中で抜け出し、ベッドの上で再度丸くなった。 「うへへ・・・、たけるしゃーん・・・ぐふふ」 俺はついに食べ物と同列になったのか・・・。 バカな事を考えたと溜息一つついて、ミリィを風呂に投げ入れた。 「ひにゃぁああああ!!!!!」 「ああ、ミリィ様、今日も素晴らしい悲鳴でございます。」 「婚約者にはもっと優しくしてくれてもいいと思うんです!!」 「申し訳ございませんが、学校に遅刻する事を許す事を優しさだとは思っておりませんので、ご理解いただきます様。」 「それと同じくらいお風呂に落す事が酷い事だっていう事を学んでくださいよ!」 「ははは、これは異な事を申しますね。」
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