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「女性を寝起きに風呂に落す事がどれだけ酷い事なのか、それは十分承知の上でございます。」
「うがぁあああ!!!!」
ミリィが仕返しにと掛けてくるお湯をひらりひらりと避けながら浴室の外へ出た。
モモに後を任せて脱衣室の外で待機する事数分、脱衣室のドアがズバァアアン!と大きな音を立てて開かれた。
「タケルさん!!」
「何でございましょう?」
「女の子にひどい事をする人はモテませんよ!!」
「別にモテなくても構いませんが、ミリィ様は私が女の子にモテモテで女の子に囲まれている方が嬉しいのでしょうか?」
「え?あ、あう・・・、複雑です。」
「それに私が酷い事をするのはミリィ様だけにございます。」
にっこりと笑顔で言ってやった。
「何で私にだけひどい事をするんですか!?」
「ミリィ様が特別なお方だからでございます。」
「はぇ!?」
「私がこういう事をするのは、ミリィ様『だけ!』でございます。」
「わ、私だけ・・・特別///」
本気でちょろい。
ミリィの後ろではモモが苦笑いで見守っている。
「さて、朝食の時間でございます。」
「あの、ひめさ「おっと。」・・・ひっ!」
懐中時計を取り出すふりをして一枚の写真を床に落とす。
「これは失敬、見なかった事にしてください。」
その写真に写っていたものは俺のワイシャツの匂いを嗅ぎながら悦に入るモモの姿だった。
「た、タケル様?」
「何ですか?」
「い、今の写真は・・・いったい?」
「ああ、最近私のワイシャツからファンデーションの匂いがするもので、その原因を探って居たら偶然に撮れたものです。」
「ど、どうぞご内密に・・・。」
「頼まれずとも誰にも喋ったりしませんよ、それよりミリィ様に何か言う事があったのでは?」
「い、いえ・・・大した事ではありませんので。」
人の弱みとはこうして増えていくんだなと思いながら、俺は笑顔でそうですか、と言ってミリィと一緒に食堂に入った。
「おはよう、二人とも。」
「「おはようございます。」」
「二人とも息がぴったりじゃないか。」
「夫婦ですから!」
そろそろ時間が押してきている事を伝えて朝食を急がせ、馬車へと乗り込んだ。
「まずはこれをお返しいたします。」
ネックレスをミリィの首に付けて返し、一言添える。
「まさに幸運のお守りでございました。」
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