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「え?あ・・・、この傷は・・・。」
「はい、私の心臓に飛来した矢を弾いてくれたものです。」
俺が座席に座りなおすとミリィが、がばぁっと襲い掛かってきた。
「ちょっ、ミリィ様!!」
「脱いでください!今すぐです!!」
「あ、朝からそんな積極的な・・・。」
「バカな事を言ってないで早く!!」
「執事服は穴だらけになりましたが、私に怪我は御座いません。」
全力で振り下ろされた剣を弾くほど頑丈な体が、矢を受けた程度でどうなる訳でも無い。
ネックレスの傷だって、付けている事を忘れていて守るのを忘れたからに過ぎない。
「本当ですね?」
「そんなに私の裸が見たいのでございますか?」
「い、いえ・・・そんな事は無いですけど・・・。」
「心配なさらずとも、この世界の現代兵器程度では傷など負ったり致しませんよ。」
乱れた着衣を元に戻して、ミリィを対面に座りなおさせる。
「それで、勇者はどうだったんですか?」
「はい、襲い掛かってきた所までは予想通りだったのですが、想像以上に弱すぎて、殺してしまいました。」
誰があの単純な横一閃を避けられないと思うだろうか。
「はい!?」
「恐らく、ミリィ様でも殺害可能だったのではないかと。」
まさに愚鈍をそのまま形にしたような、そんな奴だった。
「それじゃ、ガリアは侵略してしまったんですか!?」
「ええ、被害は城の半分と勇者の命だけだとは思いますが。」
あの半分の中に人が残っていればそいつらもだが、5分も非難に使える時間を与えたのに巻き込まれたと言うのなら、それは逃げなかったと言う事に変わりない。
「これで大陸制覇ですね。」
「今週末、イシュタールを攻め落とします。」
「はい!?」
「国王とイシュタール女王陛下の婚儀のためのプロパガンダでございます。」
「ぷ、プロパガンダ?」
「軽い情報操作も兼ねておりますね。」
「何で、そんな事を?」
「民衆は美談に弱い物でございます。」
「はぁ・・・、侵略国の国王が侵略した国の女王を娶る事のどこに美談が有るんですか?」
「イシュタール攻略は完全に私の独断、国王は関与しなかったし、むしろ乗り気ではなかったと言う体で行います。」
「タケルさんはどうなるんですか!?」
「どうにもなりませんね、ここまで来てしまうと、国外追放など自国の首を絞めるだけです。」
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