勇者と執事

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「悲劇のヒロインとの結婚は美談でございましょう?それに、結婚する事でイシュタール国民からの信頼も得られますし、それに加えて娘を侵略の立役者に差し出す事で国王と女王陛下の寛容さが民衆に伝わるのでございます。」 「何か、結婚を道具扱いするみたいで、私はちょっと嫌です。」 「考え方一つでございますよ。」 馬車が学校に到着した。 「結婚が先に決まっているのですから、そこには愛が御座います。」 「はい。」 「そこに美談が付け加えられると言うだけの話でございます。」 「でも、タケルさんだけ悪者じゃないですか・・・、私はそれが一番気に入りません。」 「それがそうでもございません。」 「何でですか?」 「イシュタールには他国から支援要請が多数届いていると聞いておりますので、恐らくではございますが、国内に内通者が数名居ります。」 むしろこの状況で私腹を肥やさんとする内通者がいない方がおかしいのだからいて当然だ。 「そいつらを一網打尽にして、女王陛下の地位を脅かさんとする輩を亡き者にすれば私は一転して侵略者から救国の英雄になりましょう。」 今週末までにそいつらを調べ上げなければならないのが多少困難だ。 「タケルさんって、意外と色々考えているんですね。」 「当たり前でございます。」 これでも世界を目指してるんだし、これくらいの事は常に考えてないといけない。 「それと、黒の騎士用のサンプルが出来上がりましたので、そのデモンストレーションと言ったところでございますね。」 「もうできたんですか!?」 「個人的にはもう少しシンプルでもいいんじゃないかって思うデザインではございますが・・・。」 厨二病なら喜んで着る事だろうが、俺は厨二じゃない。 俺のデザインから小手が削除され手甲付きの指貫グローブに変更、兜も撤去され、代わりに仮面舞踏会に出てきそうな仮面が取り付けられた。 確かにミスリルはかなり希少だし高価な物だが、その強度と何より魔法に対する絶対的な防御力は値打ち以上の価値が有る。 そして何より、イシュタール製の特殊魔法繊維イシュフェルトで編まれたその羽付き帽子。 「帰ったら着て見せてください!!」 「正直嫌でございます。」 あんな装備を身に着けている所を知人に見られたら恥かしさに悶える事になる。 いっそ死ねるのなら見られても良いが、俺は死ねない。
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