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「死にたくなければ道を開けろ!」
正面に銃を構えるが誰一人として隊列を乱すことは無かった。
「なるほど、良い国だ・・・。」
一人呟いて銃をホルスターにしまった。
「貴様らには真実を話しておく。」
俺はすべてを話した。
国王とイシュタールの女王が婚姻関係にある事。
今回の侵略は他の国の援助要請を止めるための偽装であること。
二人が結婚したのち、この国は王国の領土となる事。
「疑うのであれば確認するが良い。」
恐らく隊長であろう男が部下を一人送った。
「貴様はなぜこの様な危険な任務を一人で遂行しているんだ!?」
「ルナ、アビラ、ダルメル、ガリア、全部俺一人で落としてきた。」
「なに!?」
「お前たちが開発の支援を申し出ている新兵器も、俺が開発した。」
兵士たちがざわざわと騒ぎ始めた。
「国と言うやつは案外簡単に落ちる。国民なんぞ一人も殺さなくても、国の頭さえ潰してしまえば、戦力さえ削いでしまえば、落ちる。」
俺は近くにあった椅子に腰かけた。
「無駄な殺しは好かん、他の兵を連れてくれば兵は民を蹂躙し、死人が増えるだろう。」
「それが・・・一人で侵略する理由なのか?」
「そうだ。」
そこに先ほどの部下が帰ってきた。
「そうか・・・。貴殿の言う事の裏が取れた。」
俺は立ち上がって城の奥へと進んだ。
兵士たちは左右に解れ敬礼をして俺を通してくれた。
「外部には漏らすな、女王を捕虜として連れ帰るまでは極秘任務だ。」
「それでは貴殿が悪役になってしまう。」
「侵略は悪だ、たとえそれが平和のためであってもな。」
全ての結果が出るまで、その行いが認められる事は無いだろう。
「我々は貴殿を支持する、どうぞご武運を!」
俺はふっと笑って女王の待つ謁見の間に急いだ。
城に居る執事やメイドは皆頭を下げて道を開けてくれた。
謁見の間まで、執事やメイドが列を作り、謁見の間の扉を開ければ、近衛兵達が最敬礼を持って出迎えてくれた。
「王国よりの使者、黒騎士殿に敬礼!!」
「貴方が黒騎士・・・。」
「そうだ、タリリアント国王よりこの国の侵略を預かっている。大人しく投降しろ。」
女王は立ち上がり、ティアラを玉座に置いて俺の元まで歩いてきた。
「例えあの方の命でなくとも、私たちはあなたを支持しました。」
俺は床に膝を付けて頭を下げた。
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