イシュタール

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「協力、感謝する。」 「良いのです、貴方が来なければもうじきこの国も戦争を覚悟しなければならなかったでしょう。」 俺は立ち上がって女王に背を向ける。 「いい加減に帰らなければ、国王の首が天井に届いてしまう。」 「準備はすべて整っております、いつでも。」 「屋上から飛んで帰るが、大丈夫か?」 「はい。」 女王を連れて屋上に出る。 兵士長とメイド長が見送りに出てきた。 「女王陛下をお願いします。」 「ああ。」 女王を抱き上げ、宙に浮く 「この国の入り口の近くに馬が止めてある、出来れば保護してやってくれ。」 「解りました。」 兵士長の敬礼を受けて俺は飛び立った。 眼前に魔力シールドを展開し、女王を衝撃から守る。 およそ1時間で王城の屋上に到着した。 「秘密兵器の正体はこの魔法なんだ。」 「はい?」 「音速を超えて滑空し、シールドを展開してそのまま敵国の城に突っ込む、それが秘密兵器の正体だ。」 「それは危険すぎますね。」 「俺以外の奴が使ったら間違いなく死ぬ。」 生きていたとしても、重傷で動けないだろう。 女王を国王の待つ謁見の間に案内する道すがら、執事長に謁見を取り次いでもらった。 「黒騎士です。」 「ああ、入れ。」 扉を開けて女王を先に謁見の間に入れる。 「ジスタ!」 「アリサ!」 女王は国王の胸に飛び込んでいった。 「怪我はなかったかい?」 「ええ、大丈夫よ。」 「イシュタール侵略、完了しました。イシュタール女王を捕虜として拘束する事に成功いたしました。」 「ああ、ご苦労だった。」 「多少戦闘になりまして、けが人が数人、ですが命にかかわるような怪我を負った者はいないでしょう。」 「うむ、命令通りだ。」 「それでは私はこれで失礼させていただきます。」 俺は謁見の間を出て自室に戻り服を着替えた。 「・・・何でここにいる?」 「うぇっへっへ・・・ぷりんあらもーどぉ・・・むふふ。」 布団をめくると俺のベッドにはミリィが寝ていた。 夜明けまではあと3時間ほどだろう。 俺は寝るのを諦めて机に腰かけ本を開いた。 朝、ミリィを起こさないで食堂で食事を摂り、部屋に帰るとようやくミリィが目を覚ましたようだった。 「本日は休日でございます、お部屋に戻ってお休みください。」 俺は溜息を吐いて椅子に座って本を開いた。
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