イシュタール

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「タケルさん!?」 「何でございますか?今日は私も非番ですので、ゆっくりさせて欲しいのですが。」 本を閉じて机の上に置く。 「だいたいなんで私の部屋でお眠りになっているのですか?」 「タケルさんが心配で・・・。」 「心配は無用です、この呪いが消えるまでは死ねぬ身でございます。」 「それでも、怪我とか・・・。」 俺は黒騎士の剣を引き抜いて首に当てて引いた。 ギギィィィイイイイイ!! と言う明らかに皮膚を擦った音とは思えない音を響かせながら剣が首をこすっていく。 「な、何してるんですか!?」 「問題ございません、皮すら切れておりません。」 ミリィが慌てて俺の頭を掴み、思いっきり横に倒すつもりだったのだろうが、俺の首はびくともしなかった。 「首を横に倒してください!」 「はいはい・・・。」 首を横に倒してミリィに剣が擦れた場所を見せる。 グラムデイル製の剣は流石世界最硬度を誇るだけの事は有って、刃こぼれが無かった。 「ふぅ・・・、焦りました。」 「グラムデイル製は伊達じゃありませんね、あんな音を出しておきながら刃こぼれ一つないとは。」 剣を鞘にしまって元の位置に置く。 「それより、任務はどうでした?」 「楽な物でございましたね、イシュタールの兵士たちは協力的で助かりました。」 自国が侵略されるのに協力すると言うのもおかしな話だが。 「アリサ様がいらっしゃってるんですか?」 「母と呼ぶ事には抵抗が御座いますか?」 「え?まぁ・・・、そうですね。」 「では、アリサ様の名前をこれからお母様にしましょう。」 「はい?」 「あの方の名前はオカア様です。」 「えっと・・・?」 「ですから、あの方を呼ぶ時はオカア様とお呼びください。」 「はぁ。」 「正確にはアリサ・オカア様ですね。」 「結婚した後は?」 「アリサ・オカア・タリリアント様になります。」 「そんな無茶な・・・。」 「ミリィ様があの方をお母様と呼べる様になるまで、彼女のミドルネームは抜けないのです。」 「でも、マリィお母様に悪い気がして・・・。」 「問題ありません、名前を呼ぶだけでございますよ。」 「なぜそこまでして、アリサ様を母と呼ばせたいんですか?」 「私には母が居りません、義理とは言えあの方が母になるのです。」 ミリィは溜息を吐いた。
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