イシュタール

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蒸しパンを6個作ってバルコニーに戻ると二人は談笑中だった。 どうやら蒸しパンの話をしているようだった。 イシュタールでは伝統的なおやつとして知られているらしい。 この国では庶民の食べ物として広く知られている。 ミリィは俺の蒸しパンをお気に入りだと言った。 俺はスッと蒸しパンをテーブルに置いて元の席に座った。 「本日はレーズンとチョコレートでございます。」 「新作ですね!」 「一般的な新作でございますね、特にアリサ様には馴染みが深いのではないかと。」 アリサはレーズンの蒸しパンを一つ手に取って齧る。 「懐かしい味ですね、王宮に居た時には食べられなかった・・・。」 「素朴で優しい味がしますね、これもおいしいです。」 俺は一人チョコレートを手に取って一口齧る。 いつも通りの出来だった。 「タケル様は、料理もできるのですね。」 「様はお止め下さい、非番とは言え、私はミリィ様の従者です。」 「良いのです、私達イシュタールの民は、黒騎士であるあなたを支持すると決めたのですから。」 ミリィが間抜けな顔で俺の方を見ている、こっち見んな・・・。 「そこで考えたのですが、私に代わり、イシュタールを統治してみませんか?王国からの執政官として。」 そういう経験を積むのも悪い事じゃないとは思うが、俺は執事の仕事を気に入っているし、この間ルナを訪れた時、何かを画策している節があったのが気がかりだった。 「まだしばらくは王国から離れる訳には行きません、大陸を制覇したとはいえ、予断を許さない状況なのです。」 ガリア、ルナ、アビラ、この三国は支配と言う形での侵略だ、ダルメルに関しては完全に消滅したと言っていいから問題は無いだろうし、イシュタールの方もこの通り、俺を支持しているから心配ないが、他三国のクーデターが心配の種だ。 「特殊戦闘部隊他5人を完成させてからでないと、安心して国を出る事は出来ません。」 もしくは他の三国を完全に消滅させれば良いのだが。 「そうですね、侵略された国のクーデターが心配ですね。」 「大人の話はつまらないです。」 「ミリィ様も将来国を治めるのですから、この辺の事も考えて頂きたく思います。」 俺が呆れながらそう言うと、アリサはくすくすと笑って話題を変えてくれた。 俺はそんな二人を見つめながらクーデター対策に思いを馳せた。
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