涙のあと

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 そう言うとチユニはシャトルから離れる。無重力なので、少し地面をけるだけでフワリと大ジャンプ。  視力2.0の彼が認知できるギリギリまで離れると足を止め、地面に座る。特殊な防護服のため立っている方が楽だろうが、あえて座るのがチユニ。 「…………もう4年も経っちゃったよ、早いね。私にはあの時のことがつい昨日のことのように鮮明に思い出せるよ」  目を閉じてゆっくり呼吸を繰り返すチユニは、あの決戦のことを想い返した。  アーシルを取り込んだライトは、復活してまっすぐ突っ込んできたケダモノの振り下ろされる拳を右手で受け止めた。  素手。重さが全くないかのように易々と止めてみせ、左手に握る月刀を一閃。腕を斬り落としつつ懐に踏み込み、回し蹴りをきめた。  今度はそう吹っ飛ばず、両足を踏ん張って耐えたケダモノが黒いモヤで生み出した巨大な黒い岩を投げつけた。  シュンッとライトの姿が消え、ケダモノの頭上に現れた彼はまっすぐ月刀を振り下ろす。普通の太刀のサイズなのに、何倍も大きく見える。濃いピンクの右目が光る。  それほどまでもその一撃は、重い。とても重い。とっさに跳び避けたケダモノだったが、避けきれずにその重さで左足が潰れた。薄い黒の右目。  さらに一閃見舞おうと下から振り上げかけたライトの右胸を、背後から黒い棘のようなものが貫いた。  それはさっきケダモノが作った巨大な黒い岩、から延びている。遠隔操作もできるようになったのか。  だがライトはよろけるだけで自ら黒い棘をへし折った。しかも、大量の鮮血が噴き出すのもお構いなしで右胸から抜く。
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