月子の取扱説明書

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「――チユニさん、この向こうは交通規制がかかってますからそこを右に曲がっていくといいですよ」 「優秀なナビで助かるよ。さすがはライトだね」 「こればっかりは俺にしかできませんから。ん?待って。そこのコンビニで止めて、ここから先は歩いていきましょう」 「ライト?」  ライトは、車のナビに最適な特殊能力を持っている。だから密かにチユニは、彼が助手席に乗る時は安心して運転しているようだ。  何せ彼女は、運転がド下手だから。自分の運転技能に全く自信がない彼女にとっては最高のナビだ。  チユニの横顔を見つめていたライトは、不意に前を向くと眉根を寄せた。遠くを見つめている。  ライトの指示通り近くのコンビニに、危なげな運転で駐車すると後ろから「どないしたんや?」とレンマが顔を覗かせる。 「先客がいます。シャノン、2時の方向800メートル先。モスグリーンの12階建てのビルの屋上から探せ」 「了解」  瞬間、危なげな駐車のせいでハクトの下敷きになっていたシャノンの姿が消えた。  残ったメンバーは車から降り、チユニとライトが同時に指を差した方向へと向かう。10番目の卵が発見されたのはこの先だ。  チユニは走った。守るように彼女に付き添う月子達もまた、走った。  この先にある景色が、彼らが2度と見たくない景色でないようにと願いながら。地を蹴る足はどんどん速く、その顔にはどんどん焦りが濃くなる。  ここ最近、新しい月子の発見の報告は頻繁に報告されている。しかし、メンバーに変わりはない。しばらく、この8人のままだ。  それはなぜか?答えは1つしかない。
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