月子の取扱説明書

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「チユニさん下がってください!!レンマとルカとユラはリンクス2体とハウンド3体の殲滅、ヒロキは補助、ハクトとレナはチユニさんの護衛!」  ライトは指示を飛ばすと共にチユニの手を引いて跳び下がった。直後、前方で「ドゴォォォオォォンッ!!」と爆音が轟き、土煙があたりに立ち込める。  殲滅の命を受けた3人が土煙の中に飛び込み、ヒロキが頭上に掲げた右手を振り下ろせば視界を遮っていた濃い土煙が全て地面に叩きつけられた。  護衛を命じられたハクトとレナはチユニの斜め後ろに立ち周りを警戒する。そしてライトは、チユニの視界を遮るように彼女の前に立った。 「すみません。また…………間に合いませんでした……」  目の前に見える景色は、まさにファンタジーの世界。もう何度目かの、できればもう2度と見たくはなかった景色。  まず、中央に巨大な卵がある。ただし、その卵はチユニが初めて見た純白ではなく、真っ赤に染まっていた。  巨大な卵の殻はまるで鋭利な刃物で切られたかのように真っ二つ。中からは赤黒い液体があふれて、周りを染めている。  10番目になるはずだった月子は、生まれる前に殺された。  一体何に?それはまだわからない。ただわかるのは、こういうことが今までに何度もあったということ。  直接手を下した犯人は不明だが、今回のように殺された卵の近くには必ずリンクスとハウンドが数体いる。中身を、貪り食っている。  リンクスというのは一言でいうと、大きな猫の形をした黒い影。飢えに染まる獰猛な瞳は金色に輝き、非常に俊敏。  太く長い爪で引っかき、鋭い牙で食らいかかる。長い尾で鞭のように打ち、体当たりすることもある。1番の特徴は声、だ。
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