第6章 戦

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「・・・不思議だな。同じ灰原の性を名乗っているからか?」 「え? な、なに?」 「昇太郎といるとなぜか落ち着く気がする。まるで家族と一緒にいるかのようだ」  琴乃の何かを求めるような顔が昇太郎に向けられる。何かにすがりたいという、彼女の弱さなのだろう。最後の兄弟を失ったことで琴乃の心の中はとても孤独に近い状態になっていた。そんな心は誰か安心できるものを傍に欲していた。 「昇太郎・・・お前は私を置いて遠くへ行かないでくれ」  琴乃は壁にもたれていた体を起こし、昇太郎に抱き着きつくように密着した。何かにすがりたい。彼女の心を染める孤独の色への恐怖から、間近にいる昇太郎に助けを求めるようにくっついて離さない。 「こ、琴乃・・・さん・・・」 「こんな私に親しく友のように家族のように接してくれるのは昇太郎だけだ。皆、武芸を嗜む私を奇異の目で見る。男勝りの馬術を見せればはしたないと叱責する。父上や兄上以外で受け入れてくれたのは昇太郎、お前だけなのだ」  昇太郎は率直に馬を乗りこなし、武器を扱える琴乃が凄いと思ったことから彼女を褒めたのだ。しかしこの時代の常識では女がそこまで武芸を磨くことは非常識と言える。まったくないわけではないが、圧倒的に少数派である。故にその少数派が異端視されるのは致し方ない。 「僕は琴乃さんが琴乃さんの思うままに生きればいいと思っているだけだよ」  現代では男女平等という考えが基本になる。そして戦国時代当時は男尊女卑の時代だったと言われている。  当時は戦争が男の仕事で城や家を守るのが女の仕事となっていた。男尊女卑とは言葉だけで男女によって完全な役割分担があり、その役割に沿って自分の生き方を貫くのが当時のスタイルである。しかし現代ではそのスタイルは薄れつつある。男が必ずしも命懸けで戦ってくるわけではない。女は社会進出を果たして家を守るだけの存在ではなくなった。
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