第7章 会議

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「ここは白山家につくべきだ」 「そうだ。白山家が妥当だろう。灰原家内の多数が白山家派でもあるのだ」 「ここ最近でも戦では白山家側に立つことも多い。白山家だろう」  白山家の属するべきだという派の家臣達が声を上げる。 「何を言う。ここは黒川家だ」 「白山家よりも兵力が多い黒川家の方が戦いでは有利だ」 「ここ最近の立場は問題ではない。従属した後は黒川家に忠節を誓えばいいだけだ」  黒川家に属するべきだという派の家臣達の声が反論として飛び出す。 「何を言う。我らは独立を保つべきだ」 「従属すれば最後。どちらに属したところでこの地が戦場になることに変わりはない」 「この地の安定のためには独立状態が最も適しているのがわからんのか」  そして独立派の意見も噴出してその場は収拾がつかなくなる。飛び交う言葉は各々の意見を言うだけで相互理解や議論というには程遠かった。白山家従属を推す派閥、黒川家従属を推す派閥、独立を守ることを推す派閥、入り乱れた言葉の嵐はもはやだれが何を言っているのかさえ分からないほどで、部屋中が混迷を極めているのがわかる。 「なら独立は誰を次の主とする気なのだ」 「白山家は朝貢と軽い税で民の心を有利に誘導しているだけだ。本心は支配欲にあふれている」 「先の戦もそうだが黒川家は戦争を欲している。近づくべきではない」  言葉が飛び交い熱い議論の場となっている。しかしそれぞれが思い思いの言葉を一方的に言うだけのため、終着駅が見えない特急に乗っているような感覚だ。 「皆、落ち着かぬか! 各々方が灰原家のために知恵を出し、己の意見を言っているのはよくわかる。だがこのままでは何年たっても結論は出ぬぞ」  収拾がつかない議論が行われている部屋全体に灰原昌隆の声が大きく響く。その大きな声に今まで意見が飛び交っていた空間だったが、そこにいる全員が一瞬にして黙り込むほど威圧感のある声が騒音を鎮静化させた。
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