第7章 会議

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 皆の話を合わせてみた結果、顛末はそこまで複雑ではない。敵の奇襲を受けた灰原軍は懸命に戦い追い払った。敵を追い払った後に流れ矢に当たって戦死した灰原家の次期当主となる灰原昌隆の嫡男がいた。その間、敵が将を討ち取ったという声が上がることもなければ、味方が同士討ちをしたということで大きな混乱に陥ることもなかった。 「あと次男さんが病気で三男さんが事故って聞いたんですけど、こうも都合よく跡取りがいなくなっていくのも変だと思います」  戦国時代では現代のように医療技術が発達していない。出生と同時に死亡する赤ん坊も少なくないし、今では簡単に治る病気でもなくなってしまうことも珍しくはない。よって灰原家の面々はそこに違和感がなかった。現代から来た昇太郎だけがそこに気がかりな点を見つけた。 「えっと、実際に見た話じゃなくて聞いた話なんですけど・・・」 「構わぬ。話せ」 「あ、はい」  主君の許しを得て昇太郎は頭の中にあるものを言葉にしていく。 「主君の跡取りや兄弟を暗殺謀殺して実権を握った人がいたそうです」  昇太郎が話しているのは安土桃山時代に悪評で名を馳せた一人の戦国武将、松永久秀のことを言っている。彼は三好家の下っ端だったが高い能力を発揮して出世し、重役に取り立てられた。そこで三好家の柱でもある優秀な主君と三人の兄弟から三好家の実権を奪い取るために暗躍を始める。主君の三人の優秀な兄弟を次々に亡き者にしていき、主君を隠居に追い込んでまだ若い長男を主君の座につけた。そして三好家を好きなように操り、その後は大仏殿を焼打ちにしたり将軍を攻めて討ち果たしたりと、戦国時代に置いて他に類を見ない非道さが有名な戦国武将だ。  昇太郎は松永久秀のことを上手くぼやかしながら伝えた。この時代が松永久秀のいる時代かどうかもわからないため、なるべくごまかせるところはごまかして伝えた。
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