第7章 会議

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「・・・なるほど、危惧すべき点は確かにあるな」 「そうなると此度の白山家への攻撃、もしくは援軍要請事態が我ら灰原家を陥れるための策ということになるのか?」 「ならば白山と黒川の争いと思うておったが、実は狙いは我らに定められていたのか」  灰原昌隆は昇太郎の話に重きを置いてくれた。跡継ぎの長男が奇襲に紛れた暗殺だったかもしれないし、次男が毒殺で三男が謀殺だったのかもしれない。実行者は誰だかわからないし裏で糸を引いているのも誰だかわからない。何もわからないことだらけで疑うことさえバカバカしいが、現に灰原家は跡継ぎとなる三人の息子を失っている。疑ってかかるだけの状況ではある。  さらに言えば三人の息子がいなくなってしまったことで灰原家は存続の危機である。戦国時代に暗躍などあって当然。灰原家を吸収して得があるのは白山家と黒川家だ。より吸収しやすい状況を狙っての暗躍だったとするなら、簡単にどちらかへ従属するのは避けたい。しかしあまり相手の思い通りに事が運ばなければ次の狙いは主君の灰原昌隆か、それとも力押しの侵略になる可能性もある。 「昇太郎、よくぞ申した。確証は何もないが、その考えはなかった。礼を言おう」  上座に座っている主君が末席にいる昇太郎に礼を述べる。それだけ昇太郎の着眼点は今の灰原家に必要だと灰原昌隆は思ったのだろう。  そのお礼の言葉は正直嬉しい。しかし昇太郎はもどかしさを感じていた。現代ならば事件が起これば遺伝子レベルでの照合ができたり血液から毒薬の成分を割り出したりと、最先端の科学捜査を行うことができる。しかし戦国時代では科学捜査など行うことができないばかりか、その発想すらない。現代人が思っている以上に戦国時代では迷宮入りの事件が多かったことだろう。 「早急に返答するのは時期尚早か。今は喪に服しているということで両家への返答は少し待たせよう。その間に両家に探りを入れることにする」  灰原昌隆は今後の方針をとりあえず決定した。白山家と黒川家への返答はとりあえず先延ばしにし、まずは暗躍の可否を探るために間者を送り込むことを決めた。
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