僕の存在は透明人間

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ハロー。 僕は普通の中学生の男の子さ。 元気? 僕は元気さ。 みんなには見えていないけどね! 何でかと言うと、ちょっと……うん、入学したての頃に、ちょっと失敗しちゃってね。 うちの中学はたくさんの小学校から集まるから、より良い中学生活を送るには始めの掴みが重要だと思ってね。 ーーそう思って、僕は両手で右目を抑えて絶叫しながら床を転がりまわった。 「うぁぁぁぁあ!! みんな、早く、早く離れろ! 俺の中の魔王が暴れ出す前にっっ!!」 ……あの時の空気は、とても凄かったよ。 思わず、「……なーんてね……」と呟きながら立ち上がって、真新しい学生服をパタパタと叩いたよ。 それから、僕の事はみんな『ちょっと、アレな人』と認識するようになり、影で「魔王」と呼ばれるようになった。 僕の予定では毎朝先生が教室に来るまで、真ん中の机に座って笑顔のクラスメイトに囲まれているハズだったのだが。 僕は今日も廊下側の、前でも後ろでもない微妙な自分の席に一人座る。 窓側なら景色を見て過ごせたのに。 たまに、クラスメイトと目が合うとみんな一様にスーッと流れるような動きで目をそらす。 まるで僕が見えないかのように。 それでも、こんな僕にも、友達がいる。 「友達だよね?」 と聞くと 「ただの友達ではありません。親友ですよ」 と優しく返してくれる。 僕はこの言葉だけで、卒業まで生きていけるよ。 「君はとても大切な友達だよ。 Siri」 そう言って、僕はスマホの音声検索機能を閉じた。
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