第1章

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「琥王、クッキーならば売れるだろう。信じられる効果があるしね」  琥王が、分かり易いようにと店のエプロンを付けられていた。まさかと思うと、俺にも色違いのエプロンを用意されていた。 「着ますか……これ?」  色違いのエプロンで、琥王は鉢巻きもして店の前に立った。どう売ればいいのか。俺は、客の名前や遠視もしなくてはならない。  しかし、琥王が立ち、笑顔を振りまくだけで、結構客が集まってきていた。 「開運グッズです。これいいなとか、これかわいい!など、最初に見たものが、案外相性抜群の品ですよ」  琥王は、女性に笑い掛け、一点一点売り出していた。疲れている客には、いつの間に用意したのか椅子を勧め、クッキーの味見を用意していた。 「クッキーおいしいでしょう。疲れの取れる味ですよね。俺の愛用品です」  クッキーは売らなくてもいい。 「おいしい」  琥王は、無理に購入させるということはしない。  屋台では、女子学生が固まって品物を選んでいた。 「かわいい!」 「触ると、温かい?」  温かいは、いい反応であった。 「それは、いい相性ですね」  琥王を見て、キャーキャー騒いでいた。  客の中で、購入が慣れている人、多く購入している人の名前を確認する。遠視で、自宅や会社の位置を確認する。  観光客ばかりであったが、夕方になり、大量に購入してゆく客が数人連続で来た。しかも、男性であった。  ろくに選びもせずに、ざっくりと購入してゆく。かなりの金額になるのだが、気にもしていなかった。  皆、会社員であるのだが、どこかおかしい。屋台を片付けようとしていると、又、大量購入の客であった。これは、この品物が本物の開運グッズであると知っているのだ。 「そんなに購入なさるのならば、お安くしますよ。それに、もっと効果のある品物もありますよ」  お安くしますでは反応しなかったが、もっと効果があるでは動揺していた。 「ここの店員と大量購入の約束はしていたけど、居なくなってしまってね。効果が高いものもあるの?」 「はい。でも、面接形式の販売なのです。効果が高いと危険もあるので」  大黒に確認していなかったが、どんな効果のものがあるのだろうか。 「いなくなった店員と、大量購入のご約束があったのですか?差し障りなければ、伺いますが?」
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