第三章 失踪

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 えんきり屋を出ると、自転車で森のくままで走った。 森のくまは、電車で行く時もあるが、自転車でも行ける。  パンの仕込みをしながら、福来の事を考えてしまった。 「一弘君、週末はまた、塩冶さんの仕事なの?」 「はい……」  芽実が、困ったように笑っていた。 「又、困っている人を見つけてしまったようね。 本当に、困った子ね」  福来は困っているのか。 俺は、ひとつスッキリとした。 「クッキー焼いていくといいよ」  どこまで芽実は察知しているのだろうか。 芽実は、何でもお見通しになっていた。  福来の資料では、福来の生い立ちが書き込まれていた。 大黒との写真を見る限り、この二人には何か繋がりが存在していた。 それに、福来は神憑きではないが、何か強いものを感じる。
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