第1章

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 芽実がやっと、俺の叔父である安廣と結婚したため、芽実の祖父母に顔見せに行くのだが、俺は、芽実の親戚にいい顔はされていない。  安廣の連れ子ではなく、安廣の双子の妹の息子が俺であった。産まれてすぐに両親が事故死したので、俺は安廣に育てられた。安廣の子育てがあまりに無謀であったので、当時学生であった芽実が手を貸し、現在に至る。 「一弘君、そんなに嫌そうな顔をしないで」  芽実に指摘されるが、そもそも俺には笑顔がない。 「はい……」  琥王は、俺との旅行ということで、満面の笑みになっていた。  飛行場に行き、車を駐車させると、搭乗口に向かう。 「琥王、そこに募金箱。飛行機が落ちないように、しっかり!」 「はいはい」   琥王の募金は、厄落としであった。厄病神の神憑きの琥王は、頻繁に厄を落としていなければ、自らに厄が降りかかってしまう。 「薬師神、浮かない顔だね……」 「それはそうだろ。俺は、親類問題で良かった思い出が、何一つない」   琥王は、次の募金箱にも小銭を入れていた。厄を落とすには、自分の分身がいい。分身というのは、金が一番であったが、琥王は物をプレゼントしたり、土産を渡したりで厄を落としてもいた。  琥王は、厄落としの資金のために、えんきり屋でバイトしていると言ってもいい。 「ごめんな、又、厄落としで金使わせるな」 「いや、これは俺の問題だからさ」  飛行機に乗ると、席が琥王と俺、芽実と安廣に別れていた。これは都合がいい。 「あ、俺、少し仕事しておく」  俺も働かないと、生活費が稼げない。俺は、学費も生活費も安廣の援助を断った。安廣の収入が少ないと言う訳ではないが、余り、迷惑をかけたくなかった。  えんきり屋にやってくる、人探し。飛行機の中では、捜査はできないので、死んでいるという案件から回答してゆく。死んでいる場合は、動かないので遠視し易い。  俺は、神憑き。六人の神が憑いているが、その一番小さな能力のみ、使用することができた。遠視と透視。人の名前で、居場所が分かる。同姓同名も多いので、より詳しい個人の特定を必要とするが、塩冶が簡潔にまとめてくれていた。 「父探し」  夜逃げしてしまった、父親の捜索願いであった。寺の住所を送信しておく。 「母探し」  駆け落ちした母親の捜索。同じく、寺の住所を送信する。
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