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前から気になっていたのだが、琥王は、そういう目で俺を見ているのだろうか。
「なあ、琥王。俺達、友達ではないの?」
「友達以上かな……俺、薬師神が命よりも大切かなって思うよ。薬師神がいなくなったら、生きていたくない」
浮き輪で流れながら、琥王が笑顔になっていた。琥王の笑顔は眩しい。
「大切でも、友達ではダメなのかな」
琥王の笑顔が僅かに曇る。すると俺の心臓が、酷く痛んだ。
「薬師神は、俺をどう思っているの?」
友達は、琥王一人しか居ない。失ったら、とても辛い。そう思っただけで、涙が出そうであった。
「薬師神……本当に泣き虫だな。……俺が苛めたみたいで、どっきりした」
「……夕食に行こう」
しかし、夕食前に、琥王は土産を大量に購入していた。近所に配るのだそうだ。
「琥王、早くしないと時間が」
俺達、神憑きは、かなり食べる。神憑きの能力を使用した後は、特に酷い。
「おっと、募金箱」
ディナーバイキングに入ると、後三十分で終了という時間であった。しかし、三十分で料理が足されなくなるだけで、一時間はいてもいいという。
「肉からかな……」
とにかく持ってきては、食べているので、周囲が唖然とする。俺は遠視をしていたせいだが、琥王はいつ神憑きの能力を使用したのだろうか。
「刺身もいけるよ」
うどんのコーナーにどんぶりがあったので、刺身丼を作成してみた。
「ここ、確かに魚介もいいね」
海が近いのだ。
「でも、肉だよね。ステーキ焼いているしね」
残っていた食材を片っ端から食べてしまうと、多少、料理が足されていた。
「かまぼこ?みたいなのも、おいしい」
琥王は、おいしいと山盛で持ってくる。
「琥王、なにもここまで盛らなくても」
炊飯器のごはんもなくなり、追加で来た炊き込みごはんも、食べきる。
「……何か、見られているよね」
食べ過ぎたか。でも、果物もたっぷり食べてしまった。
「ごちそうさま」
夕食が終わり、ロビーで寛いでいると、琥王が観光案内を見ていた。
「行く島は載ってないね」
観光地ではないのだろう。何しろ、宿泊施設もない。
「あれ、どこに行った?」
琥王が俺を探している。声は聞こえているのだが、俺が庭に出ているので、見えないのかもしれない。
「弟さんなら、あっちで池をみていましたよ」
琥王と俺は、全く似ていないのに、どうしてなのか兄弟に間違えられる。しかも、俺が弟であった。
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